2003年6月21日(土)
やむを得ず2人キャンプ
新里村 源兵衛平高原



 今回は事情が違っていた。同伴者がいるのである。キャンプは子供の頃にやってみたことがあったとか言っていただろうか。悪い相手ではないが、何事にも「お客様」チックなスタンスで、今ひとつ盛り上がらない。でも、私がキャンプの話をあまりに魅力的に語るものだから、自分もやってみたいと言い出した。で、今回のキャンプについて来るという。まぁ、この楽しさを人に伝えることはやぶさかではないし、拒否する理由はない。最初で最後になるのではないかと思いつつ、しぶしぶOKした。14時に車で拾い、国道を東進した。目的地はある程度理解していたが、助手席に地図を見せて「ここだよ」と目的地を指し示したうえで地図を渡した。

 川沿いを走る谷は次第に標高を上げ、山地にさしかかった。天気がいい。梅雨入りしているはずなのに、雲もない青空が広がっている。道は車も少なく、ハンドルを持つ手も軽やかだ。

 東進する国道から左折、別の国道に入って北の現地へ向かう。が、その国道は、今走っている国道と一旦南(右)から合流し、しばらく一緒に東進した後、北(左)に分かれ、目的地に向かって抜けていくのだ。

 地図の苦手な助手席は間違った道を指示したが、私は乗ることなく正しく車を走らせた。…ちょっと雲行きが怪しいか?
 国道を正しく北に左折し、新里村を進む。しばらく走って今度は右折し、山道に入る。分かれ道にさしかかったが、傍らに案内図があった。道路は輪のようになっていて山の上でつながっている。直進しても左折しても目的地の源兵衛平高原キャンプ場に到達すると読みとれる。直進した方が近そうだ。未舗装のようだが、行ってみよう。

 ところが、これがとんでもない山道だった。やがて車は踊り狂い、底を擦り、息を切らしながらローギアでじわじわと高度を上げていく。木の枝を押し分けながら進む場面もあった。しかし、いくら進んでも山道、林の中。何度か引き返そうと思ったが、引き返すのが面倒でそのまま進んだ。

 突然、懐かしい青空が目に入った。視界が開け、山のてっぺんに出たのだ。1時間も山道を走っただろうか。本当はもっと短い時間だったはずだが、とてつもなく長く感じた。道の脇に新しいトイレが建っている。その奥には何やら展望台がある。とりあえず、登って周囲を見渡してみる。

 見晴らしは実に清々しく、スカーンと抜けた青空に山の緑が鮮やかに突き刺さっている。少し進んだ所に、キャンプ場の炊事棟らしき建物が見える。あれが目的地のキャンプ場に違いない。車に戻って、もう少し走ってみる。
 斜面の中に、2棟の建物と、小さな炊事棟、水場があった。なるほど、ここがキャンプ場らしい。しかし、どこにも案内表示がないし最近誰かが利用した様子もない。ところどころに草刈りをした形跡はあり、どうやら定期的に手入れされているように見受けられる。

 建物を見てみる。奥の建物は閉鎖されている。一つのドアはコンクリートのブロックで押さえられているだけなので開けて入ってみる。中には台所や畳張りの部屋、便所がある。しかし、空き家状態できれいとは言い難く、いずれも利用は難しそうだ。



 でも、他の設備は悪くない。もう一つの小屋には屋内バーベキューの仕掛けがあり、トイレがある。また、水場には地下水らしき水が常に流れている。おおむねきれいでよい。それに、この様子なら今回は貸し切りになりそうだ。しめしめ。よし、キャンプ決定。
 場内はやや傾斜がある。車からそう遠くなく、平らなところにテントを張る。今回使うのは、Ogawaのハリフォード5。設営は簡単、10分かからずに立ち上がった。

 今回は車のすぐ近くに設営したので、普段は面倒くさくてなかなか使えずにいるコットやチェアーを引っぱり出してみた。のんびりと体を預け、風の中で目を閉じてみる。これこそ至福である。

 高原にあるキャンプ場なのだ。高原だぞ高原。高原というか、山の上にある。梅雨だったはずなのに、空は晴々とした青空が広がっている。風はそれほど強くはないが、それでも心地よい風が吹き抜けていく。虫が多いけれど、虫除けスプレーと虫除けキャンドルで対策。特に苦にならない。

 日が傾き、空の色が変わっていく。そんなに暑い日ではなかったが、いくぶん涼しさが増してきた。うるさかった虫もどこかへ帰ったようだ。
 食事は恒例のキムチラーメン。買いだめしておいたものを今回も用意した。水、ウーロン茶をそれぞれ2リットルずつ持ってきた。コメは3合。炊いてみる。

 炊飯が苦手だ。ラーメンを多用するのもそのためであったりする。このライスクッカーでは買ってまもなく最初に炊いたのが上出来だったが、それ以来なぜかうまく炊けない。今回もやはり芯が残ってしまった。研究の課題である。

 キムチラーメンをすする。ご飯がもったいないのでラーメンのスープに入れて食べると、それはそれで食べられる。汁物ばかりになってしまったがおいしく食べる。
 ラジオをつける。NHKラジオ第一放送はかすかに入感する程度。他にダイヤルを回すが、のぞめない。雑音の中から聞こえる「真打ち競演」に耳を傾けながら、夜が更けていく空を眺めている。

 鳥の声があたりに響く。ラジオよりそちらがBGMだ。ラジオを切って静けさを観賞する。会話も特に盛り上がらない。やはり、キャンプはよほど気の合う相手と一緒か孤独に限るのだなという確信を深めることになった。

 コットに寝そべって星空を眺める。幸運にも満天の星。梅雨を忘れる。月も出ていないので、たくさんの星が果てしなく広がっている。流れ星もいくつか拝むことができたし、久しぶりに人工衛星も見た。
 夜も更けてきた。あまり疲れていないが、テントの中で休むことにする。寝袋を2つ並べて眠る。私はなかなか寝付くことができずしばらく目を開けていた。

 ウトウトしつつ、2時〜3時頃だったか外に出てみた。東の空から月が昇ってきた。見る見るうちに星が消えていく。そして東の空がだんだん明るくなってきた。月が高度を上げ、東から朝が広がってきた。

 この時間帯、空はドラマチックに変化する。毎朝繰り返されているはずのショーだが、私のように夜型の生活をしているとなかなか見ることができない。

 それに、私がキャンプをするときには休息をとりたいあまりに朝寝を楽しむ傾向がある。しかし、今回のように早く寝てしまえば見るチャンスもあるのだ。早起きしても二度寝をすれば両方が楽しめる。



 夜明けには鳥の声もたくさん聞こえる。それを目覚ましにすることができるのだから、早起きして楽しまない手はない。そう感じた朝だった。
 インスタントのみそ汁もある。朝食は、残ったごはんをみそ汁に入れて猫まんまにした。猫は大嫌いだが猫まんまはおいしいと思う。こんなにうまいものを猫などにくれてやってたまるか。

 2日目もすっかり晴れた。帰りに温泉に入り、清々しい気持ちで帰路についた。

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