2003年7月11日(金)
大雨! 仲間の送別キャンプ
秋田県 田沢湖
 我が社の異動は、この時期に内示される。職場でつるんでいたキャンプ部の仲間、Nが隣県に異動することになった。

 キャンプ部、同じ職場の異なる職種の5〜6人が作った、こぢんまりとした部だ。私はひとりキャンプだけではなく、こうした楽しい団体野営もときには楽しむ。そのキャンプ部の貴重な仲間を失うことは辛いが、彼の新任地は隣県なので呼べば参加できないこともない。にこやかに送り出したい。

 職場では正式な送別会がすでに催されたが、仲間内でも旅立ちを祝いたい。そんなとき、我々の送別会はやはりキャンプ場で、ということになる。

 キャンプ部では、昨年から4〜5回程度しかキャンプを催していない。その中でも天候・景色・星空・食事の全てで最高の出来だった隣県の田沢湖町営キャンプ場でしめくくりたいと、Nは希望した。盛岡から車で1時間、田沢湖の畔にあるキャンプ場だ。
 主賓のN、当日は外での仕事を終えて駆けつける。他のメンバーも、仕事を片づけて合流する。たまたま金曜から休みが取れた私と後輩のHの2人で、先に現地入りして準備を整えておくことにした。食事の材料や、記念に渡すプレゼントを買い出しに出かけた。

 食事は、私のダッチオーブンで「参鶏湯(サムゲタン)もどき」を作ることにし、他に少々の焼き肉を夕食とする。朝は、食パンにマーガリンをぬって、レタスと生ハムを挟んで食べる。サムゲタンは鶏をまるごと一羽使うが、調達は予めスーパーの精肉部門に予約する必要がある。今回は、大きめのもも肉を張り合わせて代用する。

 プレゼントには、スノーピークのチタン製コッヘルセットを選んだ。これからもキャンプを続けてほしいからだ。Nは、実に愉快な人間であるが、自己管理が苦手だ。部屋は産廃の投棄現場状態だという。このコッヘルセットが埋もれて忘れ去られないことを願うばかりだ。

 買い出しを終え、先遣部隊は16時過ぎに現着した。管理棟で受付をする。天候が心配されたので予約はしなかった。管理棟のおじさん、今日は他に客がいないから好きに使ってくれて結構だという。貸し切りだ。すばらしい。しかも、天気予報によると今夜から明日にかけては晴れで、降水確率は0%。ナイスな送別キャンプになりそうだ。
 テントを2つ並べて設営し、タープを張り、照明をセットした。火が好きなH君は炭火をおこし始めた。全ては順調だ。後発部隊が出発したと電話連絡が入った。

 サムゲタンに着手した。鶏のももを切り広げ、中央にもち米を乗せてもう一枚とあわせる。ダッチオーブンの中央に沈めた。H君が、もう少し多くしてくれないかという。もち米をとりあえず鶏肉のまわりにちりばめた。頃合いを見て、火にかける。

 ちょうどいい頃に後発部隊が相次いで現着した。宴の始まりだ。焼き肉を焼き、アルコールを飲んだ。1時間煮たところでサムゲタン登場。歓声が上がる。シェフ冥利に尽きる。出来は最高。次々にコッヘルに取り分ける。



 柔らかくほぐれた鶏肉と、お粥状態のもち米。各自が塩こしょうで好みの味にして食べる。大好評だ。送別キャンプに花を添えることができたと手応えを感じ、私は満足していた。
 Nは、車にギターを積んできた。ギターの腕前はなかなかなのだ。食事の後、リサイタルが始まった。ロウソクのほのかな明かりに照らされた譜面を見ながら、得意のさだまさしを唄う。一同聴き入って、Nの歌を心に刻んだ。



 ほろよいの我々は、楽しく騒いだ。どんなに大声を出して騒いでも、他に客はいない。民家もない。Nは酔っぱらって腹を出したり、仲良しのA同志とふざけて抱き合ったりしている。盛り上がっていた。

 しかし、やがて雨が降り出した。どういうわけだ。降水確率0%。この、天から降っているものは何なのだ。きっと誤差なのだろう、やがて止むだろうと思っていた。しかし、雨足は強まる一方でどうにもならない。

 タープも水をはらんで大きくたわんできた。予備のロープでもあれば水を逃がしてやることもできたが、今回は何しろ晴れの予報である。雨対策はゼロ。濡れて困るものを引っ込めて、タープをたたんでお開きにした。

 テントの中に逃げ込む。私のハリフォード5には、私とNの2人。出入りなどのためにファスナーを開けていた間に雨が入って、わずかに床をぬらした。この雨音では隣のテントと話をすることもできない。早々と休むことにした。
 明け方、目を覚まして外に出る。まだ降っている。トイレを済ませ、テントに戻る。ラジオをつける。ハングル講座をやっている。第2放送だ。なぜか第1放送は聞こえない。

 ウトウトまどろんでいるうちに、雨が急に勢いを失い、ついに止んだ。起き出して朝食の準備にかかる。きょうはNが午後から用事があるという。恒例の温泉もあるので、そうそうゆっくりしてもいられない。雨の後だから後片づけもある。



 湯を沸かして、コーヒーとスープを作る。沸いた頃に声をかけてみんなを起こした。パンに塗るマーガリンは、チューブタイプ。次々に作ってみんなで食べた。おかわりもある。おいしい朝食ができた。私は普段パンを食べないが、たまにはこうやってパンを食べるのもいい。キャンプであれば、パンの方が手軽だし。
 片づけにかかる頃には、すっかり晴れて陽射しも照りつけていた。びしょぬれのテントとタープを、そばの駐車場に移して解体する。何といっても貸し切りである。誰もいないのだから駐車場も独占だ。

 食器類は、ある程度まで汚れを落として持ち帰る。下水設備が都市部と同じとは思えないキャンプ場。普段使っている「油汚れに強い」洗剤を使ってしまうと、環境破壊もいいところだ。

 日なたにインナーとフライを広げ、一気に乾かしてしまう。濡れた道具もきれいに拭きながら仕舞っていく。雑巾で泥汚れを拭う。今回の使用前よりきれいになったんじゃないだろうかと思うくらいだ。

 シュラフも干してしまいたかったが、テントやタープに比べると時間がかかってしまうだろうから、自宅で干すことにして片づけを終えた。

 それにしても私の車ときたら。7人乗りのワンボックス車なのに、後席は荷物の山に占拠されている。で、今は2人乗り。かといって、今の住まいは押入も飽和状態であるから車に積んでおかなければならないものが多い。車に積んでいる荷物を大幅に減らすことはできないので、もう当分の間7人乗りの車としては使えない。
 温泉は、田沢湖を見下ろす高台の水沢温泉。前回も青空の下の入浴だったが、今回もよく晴れて気持ちがよい。雨で湿った体をすっかりリフレッシュさせる。硫黄の香りが心の疲れもほぐしてくれる。

 温泉の近くで何やらイベントをやっていて、駐車場は混雑していた。浴場は逆に閑散としていて、のんびりと湯に浸かることができた。温泉浴と日光浴、その2つが同時に楽しめるこの天気。1時間ほどで温泉を後にする。

 来た道とは逆に走り、角館市へ。うどんを食べようということになったのだ。晴れた日、新緑の中を国道が走る。快適なドライブだ。気温も、心地よく上がってきた。うどんも絶品だった。量が少ないのは仕方ないところ。我慢する。

 近くの商店で少し軽食をつまんで、国道を帰る。早起きをしたので少し眠い。助手席のH君と話しながら、ハンドルを握る。大丈夫だ。帰りに事故を起こしては何にもならない。無理だと思ったらやめて休む、これはキャンプの全日程において有効なことだ。

 職場でキャンプ部の道具を洗って備品入れに収めた。
 温泉にうまいもの、そして思い出。雨は降ったが、ナイスキャンプで仲間を送ることができた。

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