2003年08月02日(土)
登山ファンって…
滝沢村 馬返しキャンプ場
 私が住んでいるところの隣の滝沢村には、ほかにもキャンプ場がある。いつも相の沢キャンプ場ばかり使っているが、今日はもう一つの馬返しキャンプ場に行ってみることにした。

 いつものように、午後になってのんびり出かけた。途中までは道は同じである。天気は良くない。空は雲に覆われている。

 実をいうと、どちらのキャンプ場に行こうか途中まで決めていなかったのだ。分岐点の標識が見えたところで決心した。自衛隊の演習場の脇にあるまっすぐな道を、ただひたすらに高度を上げていく。
 馬返しキャンプ場は、宮沢賢治や石川啄木が愛した岩手山のすぐ麓、登山口にあるキャンプ場だ。駐車場のすぐそばから斜面になっていて、頂上に向かってのびている登山道と、すぐ脇にトイレが見える。その左手にキャンプ場がある。

 到着したのは夕方で、すでに暗くなっていた。曇り空も相まって、のんびり場所を選んでいる余裕はなさそうだ。斜面を登ってキャンプ場に足を踏み入れる。そこはすっかり斜面になっていて、テントを快適に張れるとは思えない。平らなところといえば駐車場くらいだ。

 荷物搬入の手間も考えて、駐車場にテントを張ることにした。駐車場には、翌朝早い登山をねらっているとみられる人が数組キャンプというか泊まる支度をしている。やはりあの斜めのキャンプ場は選択肢に含まれないようだ。

 車で奥の方までグルリと回ってみたが、凸凹しているようで今ひとつ納得できない。結局、駐車場の入り口近く、道路に近いところに決めた。この道路は、ここが行き止まりなので交通量はほとんど気にならないはずだ。
 車を停めたすぐ脇、芝が生えているところにテントを張る。オートキャンプ状態。しかし、芝のすぐ下に砂利があって、ペグが打てないところがある。小石の間にうまく通るところを見つけてペグを打つしかない。

 何とかテントを張り、必要なものを運び込んでろうそくに火を灯した。湿度は100%だと思う。辺りは霧に包まれ、見通しもあまりきかない。もう何もすることがない。食事にしよう。

 途中のホカ弁で唐揚げ弁当などを買ってきておいた。それを食べて、ビールを飲むなどして静かにしていた。
 天気は当然悪い。まとまった雨こそ降らなかったが、何しろ霧の中で湿度が高いのでフライシートはしっとりと濡れている。テントの中で本を読んだり、ラジオを聴いたりして夜が更けるのを待った。

 駐車場にキャンプ。あぁ、こんなはずではなかった。もうすこし居心地のいいところで、林の中とか景色のいいところでキャンプを楽しみたかった。

 贅沢は言っていられない。このテントの中、寝袋に入っているとなんだか幸せな気分になってくる。俗世のしがらみからしばしの間離れて、こうして静かな時間を味わうだけでも幸運である。
 夜中、物音で目が覚める。いや、人の声だ。まだ日も明けない頃。こんな時間に何なのだ。トイレに起きる。トイレは登山口のすぐ先、登山道の脇にある。

 暗闇の駐車場の一角、いや、所々で人がうごめいている。車の近くで、登山の準備らしい。こんな夜中に。全くお元気なことだ。中年以上、もはや老後の域に達している人間までもいる。ぞろぞろと、群れで支度をして山に登ろうとしている。

 トイレから帰る途中、意外にも声を掛けられた。「登らないんですか」。「えぇ、泊まりにきただけです」。−すると急に表情を変えて怪訝な顔をする。何が気に入らないのだろうか。

 確かにここは登山口にあるキャンプ場(の前の駐車場)だ。全員山に登って当然、という考えなのか、自分と違うものは想定していないのか知らないが、別に山に登らずにいてもいいじゃないか。

 怪訝な顔をされたのは、やっぱりというか何というか。中高年の登山ファンの中には、お友達になれそうにない種類の方もいるようだ。
 朝には早めに起きて食事を済ませ、早めに撤収する。テント類はやむを得ず濡れたまま車に積み込んだ。あろうことか、この日は午後から勤務。アパートの玄関前にテントを干し、いそいそと職場へ出かけた。

 限られた時間でも何とかキャンプをして、勤労意欲を維持している。キャンプはカンフル剤のようなものとでもいえるだろうか。

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