2003年08月30日(土) 職場的 温泉キャンプ 松尾村 松川温泉 |
職場の人間とキャンプに行くことになった。普段は休日に職場から遠ざかることを最優先にしているが、人間関係が悪いわけでは決してない。 たまにはこうして職場の人間にもキャンプの楽しさを教えてやることは悪いことではないし、理解されれば休暇の取り方も改善されるかも知れないではないか。 今回のメンバーは、4人。上司のK、後輩のT、そして山岳経験がある紅一点のH。Hはシュラフやコッヘルを持っているが、他の2人は全くの初心者である。シュラフなどは私のものを余分に持ち出し、貸すことにした。 職場の駐車場で落ち合い、買い出しをして松尾村に向かった。天候は晴れ。快適なドライブで山の方へ向かう。夏の緑色がまぶしい。ハンドルを握る私も心が軽やかになる。 |
市街地を抜け、山間にさしかかる。道は上り坂、林の間を曲がりくねって高度をかせぐ。 私の車は、調子が悪かった。排気筒が途中で壊れ、ゴムの部品だけでぶら下がっていたのだ。走り方によっては、途中でガラガラと音を立てる。路面を擦っているような感じなのだ。 もしこれが何らかの衝撃で壊れ落ちたら、後続車に迷惑をかけるおそれもある。危険だ。キャンプが終わったら修理に行こう。 それにしても、つい2年ほど前にも同じようなことが起きて修理したばかりだったのだが。あの修理は何だったのか。同じことがこう頻繁に起きるものなのか。日産よ、どうなんだ。 |
現場は、林間にあるキャンプ場。スノコのテントサイトがいくつか見える。その奥にはバンガローのような小屋も見えるし、温泉の建物もある。 すでに数組のキャンパーがテントを設営していた。我々も会計につづいて、場所を決めテントを張る。適度に木があって、直射日光をまともに浴びずにすむところを選ぶ。 管理人は初老の男性。世話好きらしく、テーブルを貸そうかとか、よく話しかけてくる。基本的に親切なのだが、なれなれしいと感じる人もいるかも知れない。 ![]() テントを張って一休みする。早速ビールを空けて乾杯だ。風は涼しく、真夏とは思えない快適さだ。岩手とはいえ、市街地は盆地で結構暑い。それなのに、山間に来ると大きく違う。東北の夏はこうでなければ。 |
しばらく休憩した後、夕食の準備に入る。今回のメニューは、参鶏湯(サムゲタン)に焼き肉、焼きサンマ。 まずは、煮込みに時間がかかる参鶏湯から着手。キャンプではダッチオーブンを使う料理だ。もち米を洗って若鶏の中抜きに詰めていく。ニンニクとショウガを刻んだりすり下ろしたりして、もち米と一緒に詰めたり、まわりに散らしたりする。 火をおこし、炭で煮込む。ダッチオーブンのふたの上にも乗せて、まわりからじっくりと熱を通していく。その間を利用して、交代で風呂に入ることにした。 |
風呂はキャンプ場の一角にある。恵み多き東北の山、八幡平の麓なのだから、当然温泉だ。料金は、受付の時にあわせて支払った。 事前にみた資料では、この風呂は夜になると戸締まりされるとあったが、管理人氏によると深夜も入ってよいとのことだった。 八幡平には松川温泉郷や藤七温泉などがあって、多くの温泉ファンに親しまれている。硫黄の香りがする乳白色の湯。私が入ったときには貸し切りだった。あまりに熱いので、少し水で埋めた。体のしんから暖まった。 |
サンマを焼く。東北はサンマがうまい。岩手県沿岸でも美味しいサンマが豊富に上がる。この年、サンマは豊漁にわいた。脂ののったサンマがたくさん水揚げされた。水揚げが大幅に増えたのに加えて、脂ののったサンマは早く傷むため、価格がグッと下がったのだ。![]() その新鮮で安価なサンマを人数分用意した。炭火なのに、脂が落ちて炎が上がる。それで、仕方なく網を持ち上げて火から離して焼いた。脂ののったサンマ。美味しいに決まっている。 そろそろできあがった参鶏湯と、サンマ、そして焼き肉を食べる。参鶏湯は、何だか味の濃さに課題が残った。本場で食べた参鶏湯は、別に何か調味料を入れたはずはないのだけれども濃厚な味でコクがあった。それでも、柔らかくて美味しい。栄養がつきそうだ。 ![]() 上司がかいがいしく焼き肉を焼いていく。職場ではともかく、キャンプの場においては上司も部下も後輩も関係なし。みんなが仕事を分担してキャンプを楽しむ。ランタンの明かりの下、話が弾む。 職場の人間と酒を飲んだりすると、どうしても職場の愚痴が多くなりがちだが、このキャンプではそんなことにはならなかった。すがすがしい自然の中、人間の心もゆったりと豊かになったのだろう。 |
食べ終わった頃、弱い雨になった。こんなはずではなかったのに。食器類は軽く洗ってカゴに放り込んで片づける。炭火はそのまま放っておけば小雨で火が消える。 濡れたら厄介なイスなどを先に車に積んでおく。酒を少しテントに入れ、靴が濡れないように袋に入れてテントの片隅、足下におく。 4人が寝袋に収まって、しばらくくだらない話をする。仕事で川柳を扱うことがあるが、「地獄川柳」というものを思いついて、競うように詠んだ。実にくだらない、ナンセンス。しかしそれが面白い。これこそがナンセンスの美しさなのである。外は雨の音。テントの中では、押し殺すような笑い声が深夜まで続いた。 |
朝、雨は上がった。朝食の前に、テントや寝袋を片づけてしまおう。雨に濡れているが、ある程度大まかに片づけて、職場の駐車場などで乾かせばよい。 雨に冷えた体を温めるべく、朝風呂を楽しむ。キャンプとなると風呂を我慢する方式が世間には多いかと思うが、私にとって、それは避けたい事態だ。 キャンプに温泉は付き物で、すぐ近くに温泉があるとなるともう大喜びである。実に贅沢だ。でも、東北・岩手でキャンプの喜びを知ってしまった以上、温泉との結びつきが強いのは仕方ないことであろう。今後の赴任地にもこうした好環境が用意されていることを切に願うばかりだ。 朝食はパン食にした。食パンにチューブのバターを塗り、生ハムとレタスを挟んで食べる。これは簡単なのだが、結構うまい。灯油ストーブで湯を沸かし、熱いスープとコーヒーも作った。 出発を控えた朝食には、できるだけ簡単でかつフレッシュなおいしさを楽しめるメニューを選ぶ。こうすることで、楽しみを心の中に新鮮に残したままキャンプを締めくくることができるのだ。 |
今回の参加者はあまりキャンプをしたことがなかったというが、あれは楽しかった、またやろうと好評だった。面倒をみたり世話を焼いたりするのはキャンプ好きとしてまんざらでもない。しかし、毎回だと億劫になる。 まぁ、いずれにしてもこうして理解者が増えれば、私の休暇の取り方も改善されて、キャンプを楽しむ環境は整っていくのではないだろうかと確かな手応えを感じた。 |