2003年11月1日(土)
今さら? ソロ用タープ導入
胆沢町 つぶ沼園地
 金曜日のうちに、仕事は片づけた。土、日、祝と続く神聖な三連休を仕事で汚してなるものか。おかげで帰宅は遅くなったが、キャンプが美しく飾れるならそれでいい。

 早いものだ。もう11月である。日もすっかり短くなった。17時にもなればとっぷりと日は暮れ、闇が支配する。キャンプに出るのが遅れれば、好適な場所に設営するのが困難になる。快適なキャンプのためにも、16時30分までには現着しておく必要がある。

 この日も普段の平日と同じ09時頃に起き出した(私は夜型、朝は遅いのだ)。休日には朝寝を楽しむことも喜びの一つだが、大事なキャンプが待っているならそれを我慢して準備をしよう。
 車は数日前に車検に出しておいた。ガソリンスタンドで取り次ぎを頼むといろいろサービスもいいようだ。洗車、ワックスがけ、さらには車内の掃除までやってくれている。きれいになった車に、いつもの道具を積み込む。

 これまではいつもいろんなものを積んでいたが、車検の前に全部降ろしていた。必要なものだけを積むならば少しは荷物もコンパクトになるだろうか。普段、ソロなのにやたらと荷物が多いのに困っていたところだったのだ。

 今回、新たな道具を試そうと思っている。タープである。ソロ用のものを買った。新たな道具が加わったが、これで荷物が単純に増えてしまわないようにしたい。選んで積んでいく。
 だいぶコンパクトになった。といっても、書き並べると結構ある。テント、マット、シュラフ、チェア、テーブル、灯油ストーブ、食器類の入った道具箱、水や食料を入れたクーラーバッグ、水タンク、そして新しいタープだ。

 いそいそと出かける。途中で回転寿司。サバが美味しい。空はすっきりと晴れていて、日差しがまぶしい。愛用のサングラスをかける。右の太股にはパイロット用のニーボードをつけて、道順などのメモを挟んでいる。これで快適ドライブだ。

 車は国道を南下し、県南部の胆沢(いさわ)町を目指す。西に折れて別の国道に入ると、ダムがあってその先が現地となる。国道は混んだり信号機が多かったりして面倒くさいので、一本入った大きめの県道を走る。

 予定通り、西向きの国道に入り、ダムを目指す。何やら大規模に工事をしている。その脇を抜け、大げさな取り付け道路を走り、現地を目指す。
 紅葉の中に、そのキャンプ場は私を待っていた。現着はおよそ予定通りの1640。眺め回すと、沼の手前に管理棟が建っている。奥の丘の上にはバンガローが2〜3棟見える。管理人らしきおじさんが現れたので挨拶する。

 聞けば、沼の近くに車を乗り入れなければどこに設営してもいいようだ。さらに、道路の反対側にも建物があって、その向こうにもテントを張ってよいとか。どうもそちらの方が平らで快適のようだ。

 行ってみると、建物の先に広がる草地は一段低くなっていて、茂みに接している。その茂みの向こうは崖になっていて見えない。その草地には、ところどころ資材らしきものが置かれている。ダム建設関係で、ヘリコプターで運んだりするのだろう。ホイストで吊せるような作りのネットに入っている。



 奥には、だいぶくたびれた東屋がある。そのすぐ手前に設営することにした。おじさんによると、この広場に車を乗り入れても構わないという。最近は荷物を運ぶのが面倒くさくなって、車のすぐ脇でキャンプをしたいと思うことが多い。
 初めて張る、モンベルのミニタープHX。一人で張るのも難しくない。これはいい。しかし、ミニというだけあって小さい。ソロか2人用でちょうどいい。



 そのタープに首を突っ込むように、同じくモンベルのムーンライトテント2を設営する。お揃いのグリーンの色が、夕暮れの空に溶けこむように見えた。日差しの下では鮮やかに、激しく見える色だが、夕暮れにもしっとりと似合う色だ。

 テーブルとチェアなどあれこれを運び込み、とりあえず座ってみる。見える範囲には誰もいないが、遠くにはダム工事現場の気配がある。空には、半月がぽっかりと浮かんでいて、それは改めて驚くほどの光で地上を照らしている。

 食事にしよう。「どこでも炊飯器」という便利な道具でごはんを炊く。水加減なし、道具に米を入れて15分煮ればよいのだ。失敗する余地がない。そして、ソウルで買ってきたレトルトのコムタン(テールスープ)に炊いたごはんを入れる。これで、なんちゃってコムタンクッパになる。塩こしょうで味を調えて、アツアツをいただく。
 気温はだんだん下がっていく。見ると、テントのフライとタープには露がたくさん付いている。ろうそくの明るい光に照らされ、タープの下に並んだ道具が輝いて見える。月はだんだん西へ滑っていき、時々、星の間をジェット機の光が遠く進んでいく。

 50m以上離れているだろうか、建物の手前には1台のエスティマが停まっている。車内には人影が見える。男性が1人、何か食べて、就寝準備をしているように見える。車内泊だろう。

 ラジオは、地元局は入感せず。関東はTBSラジオと文化放送が聞こえている。聞いているうちにだんだん音は小さくなる。触ればまた持ち直す。何度か繰り返すうちに、飽きてしまった。

 テントに潜り込んだ。寒い。しかし味方はいつものダウンの寝袋。中に入ると、たちまち暖かくなった。快適だ。時刻は21時過ぎ。特に本を読むわけでもなく、すぐに横を向いて目を閉じた。何か夢を見たかもしれないが、おおむね熟睡できた。
 明け方、5時に起きだした。東の空は明るくなってきた。無事に朝を迎えたようだ。テントから這い出し、白い息を吐きながら朝日を迎撃する。

 にぎやかに空を飾っていた星たちは静かに姿を消し、太陽に道を譲っていく。東の空には北斗七星も見える。消えかかったオリオン座が、西の空から季節の移り変わりを告げている。

 朝が来たのを確かめて、私は再びテントに入る。ここからは楽しい二度寝の時間だ。楽しいといっても、ただ寝るだけなのだが。思えば、先週は仕事で朝寝が全くできなかった。それを取り返すように眠る。あぁ幸せだ。



 …すっかり日も昇り、10時を過ぎると気温も上がってきた。テントの中も小春日和。這い出して朝食の支度をする。今朝もごはんを炊いて、今度はハヤシライスにしよう。灯油ストーブ、湯を沸かすのはあまり得意ではないのだろうか。なんだかやたらと時間がかかってしまう。

 まぁいい。これもスローフードだと間違いを承知で納得する。焦らず、ゆっくりと食事をとる。

 この辺りは、ダム湖を見下ろす展望ポイントになっているようで、入れ替わり立ち替わり乗用車に乗った行楽客やライダーが訪れる。テントのそばまでは誰も来ない。公衆トイレや建物があるあたり、ここから50m以上離れたところにいるだけだ。
 食事を済ませ、のんびりと過ごす。麦茶を飲み、空を見上げて紅葉を眺める。焼石連峰の山が燃えているように見える。見頃は終わりにさしかかっているのだと思うが、それでもまだ鑑賞できそうな美しさだと感心する。



 13時を回った頃、撤収に着手。寝袋は、テント内の結露で少々湿っているので、テントの上に乗せて干しておいた。タープもテントもすっかり乾いている。

 前回のキャンプでは、帰り際もスカッと晴れなかったが、今回はよく晴れていて、道具もバッチリ乾くのがうれしい。濡れたまま仕舞うのはマズイわけで、これだけ晴れたキャンプで今シーズンを終われるなら願ったりだ。

 車に積むにしても、今までよりも整頓されている印象だ。必要最低限とまではいかないが、従来よりはずいぶんスッキリした。今回使わなかった道具も、仲間と大勢で出かけるときには使うわけで、それまでは狭いアパートで保管しておかなければなるまい。押入はすでに一杯に近い。悩ましいものである。
 帰りには、すぐ近くの温泉に入った。1時間未満なら310円という。時間に追われてしまうようで違和感もあったが、別に急がずとも充分間に合うものだった。やはり、若い私にとっては毎日風呂に入らないとどうも具合が良くない。これでスッキリとリフレッシュすることができた。

 帰りも裏道をひた走る。対向車も少ない農村部を、快調に飛ばす。市内に近づいたところでスポーツ用品店に入り、帽子を買った。夜の寒さには、やっぱり帽子がほしいと思ったからだ。フリースの上着を着て、膝に毛布を掛けていても、頭は寒風に吹かれる。

 今シーズン、再びキャンプをするかどうかわからないが、帽子を買ってみた。次のキャンプが春になってからということになっても、きっと真冬の通勤にも使えるに違いない。

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