2004年6月27日(日)
キャンプ場の下見ドライブ
滝沢村「相の沢キャンプ場」
雫石町「滝ノ上キャンプ場」
雫石町「さえずりの森」

 この日は、キャンプというよりドライブである。こんなものを載せていいのかどうかわからないが、一応、キャンプのための下調べのような目的を帯びている。仲のよい女子(この日の帰り道、とうとう「相方」へと昇格)を助手席に乗せて、楽しく郊外へ車を向ける。

 最初に向かったのは、私のホームグラウンドである「相の沢」。

 生まれて初めてひとりキャンプをした、思い出のキャンプ場だ。大げさにいうならば、自分の原点を紹介するような心境である。駐車場に車を入れ、場内を何となく眺める。景色の自慢をして、さらに山奥へと向かう。

 行ってみたかったのは、葛根田川(かっこんだ・がわ)の上流にある「滝ノ上キャンプ場」。滝ノ上温泉に隣接する、山あいのキャンプ場だ。地図で見ると、本当にもう何というか山である。近くに地熱発電所もあり、温泉も楽しめそうだ。いずれはここでキャンプをしたいと考えていたが、どうも転勤前に実現させるのは難しい情勢だ。
 途中、川沿いの絶壁がまるで結晶でもできたかのように規則正しく美しく割れている崖があった。1998年には葛根田川の上流部の断層を震源とするM6の強い地震が起きた。その地震でだいぶ崩落したと聞いているが、この日ここを通って眺めた限りでは地震の爪痕もぴんとこないまでに片づけられていると感じた。

 温泉旅館のような建物を過ぎ、さらに奥へと進む。看板に従って右折して川を渡ると、左カーブの先の左手に入口が現れた。



 うっそうとした森の中にあるようだ。じゃまにならないように、行き止まりになっているところに車を停めて歩いて入る。入ると、すぐに案内看板が目に入る。





 すぐ近くの旅館に申し出て使うことになるようだ。一旦、もと来た道を少し戻ることになる。200円ならばまぁ安いけれども、無料にしてくれるのなら一層ありがたいのだが…。
 今日は下見であり、キャンプするわけではない。利用料は発生しない。遠慮なく入っていく。薄暗い森の中、小道を歩いて進む。自動車の乗り入れはいうまでもなく不可能、自転車やバイクなら何とかなるだろうか。しかしながら、細い木の橋もあって歩きで行くより他にないようでもある。



 雨が降ってまもなくだったか、それとも日光が入らないからか、湿度が高いような気がする。足もとも、ところどころ水たまりなどあってぬかるんでいるところも。また、木の橋もいくらかwetな感じ。苔むしている。道具を担いでふらふら歩き、足を滑らせて転んだら大変だ。

 トイレというより、これはいっそのこと「便所」と呼んでやった方が相応しい。キャンプサイトの手前にあった。むろんくみ取り式だ。



 この便所を夜中に利用することになれば、肝試しも兼ねられそうだ。



 ほどなく、広場に出た。この広場の先は葛根田川になっている。硫黄の香りも漂っている。テーブルや椅子が備え付けられていて、そのすぐそばにテントを広げていた跡も見える。今朝まで誰かが滞在していたのだろうか。





 広さはそこそこ、中央(写真では左)には、たき火をするスペースも用意されている。水場もしっかりした造り。でも、なんだか蚊が多く出るのではないかと不安になる。

 葛根田川の河原には、キャンプ場からすぐに降りていける。せせらぎが聞こえている。





 誰かがスイカでも冷やしたか、流れのなかに石を円形に並べてある。上流には何もないから当然かも知れないが、川の水はとてもきれいだ。食べ物や飲み物を冷やすには適している。

 私たちが歩き回っていると、もう一組の男女が同じように河原に現れた。温泉に入るついでに見物にやってきたのだろうか。辺り一帯が硫黄の香り。温泉は白濁した硫黄泉だろう。あちこちで湯煙が上がっているくらいだから、きっと湯の温度も高いのだろう。山奥の秘境感もよい。いずれキャンプに来てみたいと思った。
 あちこちに地熱発電所がある。どの施設も人の気配がなく、湯気だけが力強くどんどん噴き出している。



 連れとこういう写真を撮ってふざけるのも楽しい。…こんな写真載せて、私ときたらどうするつもりなのだろうか。
 葛根田川に沿って標高を下げ、東よりに進路を変えて小岩井方面へ。国道46号を北に外れて山道に入ってみた。その先に何があるか、私も連れも特に知らない。私は、このようにあてのない道を行くのが大好きだ。細い道に迷い込んで、さぁどこに出るのだろうとわくわくしながら進むのだ。

 舗装されていないくねくね道を走り、山の裏手に入り込んだ。小岩井の西手、七ツ森と呼ばれるあたりだ。宮澤賢治の作品にも出てくる。岩手県が整備したのか、「東北自然歩道/新・奥の細道」というのが県内のあちこちにあって、私たちがいま進んできた道もその一つらしい。やがて、道の右手に南向きの脇道と看板が現れた。





 なるほど。さえずりの里。どこにでもいるシジュウカラ、キビタキ、それにオオルリが棲んでいるらしい。野鳥の森だ。国道から離れ、静かな森林を野鳥の声に耳を傾けながら歩くなんてすばらしい。仕事のことを忘れてリフレッシュするのにもってこいだ。



 車を降りる。駐車場のわきに、きれいなトイレがある。簡易水洗。よく手入れされていて利用しやすい。もしかすると、本来ここはそれなりに賑わうエリアなのかも知れない。静まりかえった森を少し歩いてみる。トイレと反対側に目をやると、すぐそこに水場がある。



 上の写真の左手に道があり、そちらに向かって緩やかな下り斜面。道の手前には沼があり、大きな魚がゆったりと泳いでいるのも見えた。湿地のようになっている。前に訪れた「滝ノ上」と同様、ここも真夏は蚊が出そうだ。

 また、シーズンオフなのか、水場は幾分散らかっていて水も出そうにない。最近誰かが使ったような形跡もない。忘れ去られた施設。もう7月も間近だというのに、これはもう市民が利用することを前提としていないとでもいうのだろうか。



 さらに奥には、木でできたベンチと小屋があった。小屋をのぞいてみたが、特に何もない。見る限りそこにテントサイトのようなものはないが、それでも小型のテントなら難なく張れそうだ。



 謎は深まるばかりだ。キャンプ場ではないらしい。でも、キャンプ場を作ろうとしたようにも見える。しかし、キャンプできそうで、できないようで…。ドライブの途中で偶然見つけたこの場所は謎めいていた。

戻る