2005年5月3日(火)
帰ってきたぞ相の沢、春満喫キャンプ
滝沢村 相の沢キャンプ場
 4月から5月にかけて、世間様は連休である。革命的労働者階級である私にとって、これまでそんなものとは無縁であったが、とうとう私もカレンダー通りに休む羽目になってしまった。普通の人は喜びそうなものだろうけれど、私の意向としては、世間様が休んでいる日は働いて、世間様が働いているときにこっそり休みたいのだ。そうすれば盆正月そして連休といった「混雑期」を避けて休みが取れるではないか。それが理由だ。

 世間様が揃って休みとなるこの時期、観光地、高速道路、旅客機、鉄道は諸兄姉ご存じのとおり宇宙的なメチャ混み地獄だ。そればかりか商魂たくましい連中が卑しいほどにあらゆる料金を割高に設定し、普段設けているような割引など忘れた顔をして美しくない商売をしている。そんな時期にわざわざ私まで出かけることはない、心の底からそう思っている。

 ということで、カレンダー通りに休ませようとする上司に私は少しばかり抵抗したのだが、あろうことか彼は「まぁまぁ、あとから急に忙しくなって休めなくなったら困るからさ」と、私の意向とはまったく逆向きの要素を持ち出して説得を図ったのだ。

 うぎゃー。それだけは勘弁してくれい。

 …結局のところ抵抗もむなしく(サラリーマンたるもの、無理に意志を通そうとするとあまりよろしくない、と学んでいたりして)、大型連休がやってきた。わたしは岩手に飛んでいた。岩手への交通手段については、競争がないこともあって、一年中いつ乗っても割り引き意欲に乏しい路線である。閑散期には人が変わったようにドーンと値を下げる幹線を利用するのは何だか悔しいので、結局岩手行きに落ち着いたのだ。


 北国は春を迎えていた。ポカポカ陽気に誰もがニヤニヤしているように見える。日中は気温も高く、春の嵐が吹いていた。そんな中、相方と向かったのが私の原点ともいうべき「相の沢キャンプ場」であった。


清潔なトイレ、あっぱれ滝沢村役場

 ここは無料でシンプルでトイレもきれいで文句なし。
 しかし、さすがに連休とあって賑わっている。テントや車の数がいつもよりずっと多い。むむむ。


「ここをキャンプ地とする」

 どこに陣地を構えようかと歩き回って思案した結果、砂利道右手のスペースに決めた。芝がほどよく生えていてやわらかく、小石なども落ちていないから睡眠時の不快感はなさそうだ。このキャンプ場は割と傾斜があって場所選びに苦労することもあるのだが、今回はまずまずの場所を確保できた。



 テントは2人用のUNIFLAME製「AG-2」である。今まで基本的にソロだったから、このテントは今日がデビューとなる。設営も楽だった。前室が広く、使い勝手の良さが設営しながらでもよくわかる傑作だ。



 のんびりしていると日が暮れる。ぼちぼち夕食の支度をすることにした。メニューはカレーライス。定番だが、レトルトにした。まず文明の利器である「かんたん炊飯器」にてメシを炊く。プラスチックの容器に半分だけ米を詰め、沸騰した湯に放り込んで15分。これで全く失敗なくうまいメシが炊けるのだ。

 飯盒炊爨の手間、釜で炊くメシの奥深さなど、それぞれに趣はあれども、とにかくこの便利さは信じられない。水加減や火加減の苦労はどこへ?



 同時に、別のクッカーでレトルトを温める。こちらは炭火だ。



 以前はとにかく安いカレーを求めていたのだが、最近は少々値が張ってウマイのにしようと志向が変化してきた。繊細で深い味わいがキャンプ地でも手軽に楽しめる。
 少人数で、のんびり過ごしたいならレトルトで十分だ。



 あぶりものも用意した。写真はししゃもとエリンギ。他に舞茸も買っておいた。今回は少し値の張る「岩手産の木炭」を使っている。岩手県は日本一の木炭の産地。ゆっくりと燃える上品な炎が味と香ばしさを引き立てる。



 あぶりものを肴に、梅酒を温めてちびりちびりと楽しんだ。

 日が暮れると雲が広がり、冷たい風が吹くようになった。春とはいえ、北国らしく夜は冷えてくる。用意しておいたダウンジャケットを着て、小声で相方と他愛もない話をしながら炭火が静かに小さくなっていくのを見守る。

 あたりも寝静まったようだ。何時頃かわからないが、夜中に火の始末をしてテントの中に入った。


 翌朝も晴れて気持ちがよかった。気温も上がり、テントの中にいると暑く感じる。新品のテントは居住性もなかなかよい。初めての使用だったが、広い前室と張り出しのおかげで出入りも楽だ。前と後ろをメッシュにして風を入れ、しばらくゴロゴロ過ごして朝食とする。

 朝はホットサンドにした。snowpeakのホットサンドメーカー「トラメジーノ」を導入、初使用だ。盛岡時代に職場の仲間と出かけたキャンプでサンドイッチを食べ、パン食も案外うまいと気づいていた。キャンプ好きな人たちのwebなどを見ていると皆が一様にホットサンドのうまさを褒め称えている。ならば私も。単純だ。好きなメーカーであるsnowpeakが出している製品を手に入れて、今回使ってみることにした。



 スーパーで売っているサンドイッチ用のパンが大きさもちょうどよく手頃だ。チューブ式のバターを塗って、レタス、チーズ、生ハム、トマトスライスを具に採用。サンドイッチ用のツナやコーンの入ったマヨネーズ風の調味料をつけて挟み、炭火の上でしばし焼く。というか温める。じゅうじゅうと音が聞こえてきたところで火から下ろし、やけどしないように開いて食器に移す。

 よい香りが広がる。
 私は猫舌なので少し待つ。中でトマトが熱せられて大変なことになっている。水分が多いので、その熱い汁がパンを透過して外に漏れだし、手に付いたりすればやけどのおそれもある。いたずらに圧迫しないように気をつけなければならない。ほどよく冷めて、それでもなおアツアツのホットサンドに注意深くかじりつく。



 うまい。うまい。うますぎる。本当にうまい。相方も喜んで食べている。感動したようだ。

 パンの表面はカリッと香ばしく焼けていて、中身は熱いトマトととけたチーズがからみ合い、生ハムの存在感もきわだつ。パンがなくなるまで全部作って食べてしまった。大成功だ。これを朝の定番メニューとして採用することに全会一致で決定した。ただ、ホットサンドは少し手がかかるので、ひとりキャンプの時には従来どおりリゾットなどのさらに簡単な食事となるのだけれども。

 スープは、レトルトの「冷製スープ」にした。温めなくてもよいし、冷たいままでとてもおいしい。カボチャやほうれん草などのスープがある。これもうまい。充実した朝食タイムだった。



 のんびり過ごしていると、キャンプ場内で犬の散歩をする不届き者2名が視野に入った。犬は連れて入らないようにと看板も出ている。しかもこの2名は犬の糞を始末する用意をしていない。おそらく同じ家族、この者たちは兄弟か何かだろうと推察できた。迷惑千万、言語道断、懲悪勧善。心の中でミサイルを発射し、この2名に命中させておいた。

 ともあれ、快適だったので続けてもう一泊することにした。テントの周囲を片づけ、大事なものを引き上げてキャンプ場を離れ、近場で入浴をしたのちに買い出しに出ることにした。

(つづく)

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